2020/7/4
この1年間いろんなことがありました。
職場の異動があり、2回引越をし、車を売り、2回転職の機会があって結局転職せず、忘年会の余興で松田優作になり、恋人と別れ、27歳の誕生日を迎えました。
何かあるたびに奮闘がありましたが(業者を呼ばず自分達だけで引越をした結果疲労で高熱が出たり、出版社への転職の面接の際は本の企画を100本考え10本に精選して持ち込んだりなど)、しかしそれを詳述したところで、それらは僕にとっては個別の出来事でも世間一般からすれば「よくあること」であって「で、何?」「オチは?」と言われるに決まっているし、そもそもそれらに付随する後悔がフラッシュバックして枕に顔を埋めて叫びたくなる。こうなったらもう僕の好きなことについて書き散らすことにした。オチなどない。僕だけが満足すればいいのだ。やほほ。
というわけで、ゲームの話をする。
いまはもうほとんどゲームをしないけど、昔はゲームばっかりやってた。
僕は「MOTHER2」というゲームが大好きで、たぶん人生で一番やりこんだとおもう。これの認知度って世間一般的にどれくらいのもんなのかわからないけど、ほとんどの人にとってはスマブラに出てくるキャラクターである「ネス」のゲーム、くらいではないだろうか。
スーパーファミコンのソフトで、もう26年前に発売されたものなんだけど、今年になって「ほぼ日MOTHER PROJECT」というのが始まり、公式からトリビュートコミックやTシャツなんかが発売されたりして、じつはいま「MOTHER2」がとてもアツいのである。僕もTシャツ欲しかったんだけどすぐ完売してしまったので、再販を待っている。
ゲームボーイアドバンスでリメイクされて、いまは3DSとかWiiUとかのバーチャルコンソールでできるのかな?影響を受けたと公言する有名人も多くて、星野源なんかも10年前くらいに公式サイトでコメントしたりしている。
僕は小学校3年生くらいのときに初めて触れて、そこからやみつきになった。きっかけはその音楽の良さだった。夕食時に「良い音楽だから」と家に1台しかないテレビを占拠して、ゲーム画面を家族に見せつけるイタい子になった。
ちなみに子どものときはスーファミのソフトだけでもドラクエ、FF、ロマサガ、天地創造、聖剣伝説、バハムートラグーン、マリオRPG、クロノトリガー等々、のちに名作といわれるゲームをやってたわけで(クロノトリガーについてはNHKの番組で宮野真守が言及してたね)、我が家のゲーム環境は良かったといえる。良かったといえるのか?まぁゲームしすぎてめちゃくちゃ目が悪くなった。
MOTHER2の内容。
MOTHER2はどんなゲームかというと、基本的には普通のRPGで、じゃあこのゲームの何がそんなに良いのかっていうと、これを一言で言うのがなかなか難しい。だからひとに勧めづらい。なぜか。
(以下、ネタバレ)
主人公の家の裏山に隕石が落ちてくる。
「隕石を見に行こうぜ!」、隣に住む悪ガキ「ポーキー」が主人公を引っ張り出す。そこから、主人公の世界を救う冒険が始まる。
ポーキーの両親は粗暴でネグレクト気味。弟ばかり可愛がって、ポーキーにはブタ呼ばわり。ポーキーは敵と組んで揉め事を起こしたり、仲間を拉致したりして、主人公の冒険をずーっと邪魔してくる。そして、最終的には準ラスボス的な存在になってしまう。
物語の終盤、主人公の深層心理の世界を進むところがある。そこでこのポーキーが出てきて話すことができる。その会話の内容は、主人公を羨ましがるもの。「お前はいいよな。おれなんかだめさ。」「でも友達でいような。」云々。
主人公の心の中のポーキーが、主人公を羨ましがる?
主人公はポーキーに対して優越感を抱いていたのか?
主人公の他に友達のいないポーキーが主人公に邪魔ばかりしてくるのは「かまってほしい」のあらわれだと感じていた?
それなのに放っておいたのか?
主人公は作中、ヒーローとして描かれるけれど、ポーキーは人々に嫌われ、悪に身を落とすことになる。主人公は正義なのか?悪ってなんだろう?
ポーキーは続編である「MOTHER3」にも異形のものとして登場する。動物を化け物に改造したり、母親に似せたロボットを大量に配置したり。反面、「2」の主人公からもらったヨーヨーを大切に保管してたり…「3」は通奏低音としての物悲しさ、やるせなさが「2」よりも強調されていて、個人的にはちょっとしんどい。
とはいえ、「MOTHER2」はいわゆる「鬱ゲー」ではない。残虐な要素なんて全くない。敵を倒した後も「たおした!」「ころした!」ではなく、「われにかえった」「つよくたしなめた」「おとなしくなった」等と表示される。言葉を大切にしている。
そして、素敵な音楽、独特なセリフ回し、ふんだんに使われている映画・洋楽のパロディ、オマージュ。作中、黒スーツの2人組(ブルース・ブラザーズ)や、黄色の潜水艦(ビートルズ)が出てきたり、ザ・フーのある曲のイントロまんまのBGMがあったり。他にもニュー・シネマ・パラダイス、スタンド・バイ・ミー、BTTF…。僕なんかは本家より先にこっちから知ったものです。
小ネタも多い。
冒頭でキャラの名前を決める際、「あなたにとってカッコいいと思うものは何ですか?」と問われる。作中、主人公が強力な技を身につけるとき、ここで答えたものがその技の名前になる(憎いぞ!)。僕は小3当時、時の総理大臣・小泉純一郎になぜか心酔していて、「コイズミ」と入力した。作中でコイズミという技を覚えたときにはちょっとウケてしまった。
また、ゲームの途中でプレイヤーの名前を入力することになる。これはクリアした後のスタッフロールの最後に、「Player」として自分の名前が出てくる仕掛けとなっており、「自分もこのゲームに参画してるんだ!」と感激した記憶がある。これは主人公に自分を投射せず、あくまで作品を支えるひとりとして認識させるものであり、そういった意味で非ドラクエ的といえる。知らんけど。これもひとつのユニーク。
つまるところ、「MOTHER」シリーズは派手な演出や単純明快なストーリー、といったようなエンタメ的面白さではなく、物語に通底する「暗さ」や小ネタのユニークさが醍醐味であって、そこがカチッとハマる人とハマらない人がいるとおもう。だから、ひとに勧めづらいのかもしれない。
少なくとも僕はこのゲームを中心として、糸井重里を知り、洋画・洋楽を知り、そして鈴木慶一、ムーンライダーズ、YMO、村上龍…とどんどん知識が派生していって、いまの自分をかたちづくったのはたしかだ。
そういうわけで、「MOTHER2」は僕にとって大切なゲームである。よかったら、遊んでみてください。
(↑作中で僕の一番好きな、雪だるまの台詞。場所は主人公の心の世界。画像は拾いもの)